訪日外国人の声をどう戦略へ変えるか―データ活用時代のインバウンド戦略論 Part1
2026/06/30
先日、弊社で実施した「インバウンド動向に関する自主調査」の結果を掲載しましたが、
コロナ禍を経てインバウンド市場は再び急速な回復局面に入りました。
観光庁や自治体、商業施設、小売業界、交通インフラ企業など、多くの事業者が「訪日外国人の実態把握」を
重要経営課題として位置づけています。その中で再注目されているのが、街頭アンケート調査です。
空港、観光地、繁華街、商業施設周辺で実施される街頭調査は、旅行者の“生の声”を取得できる非常に有効なフィールドリサーチ手法です。しかし現場では、「調査を実施しただけで終わっている」というケースも少なくありません。
これからのインバウンド対策に必要なのは、“データ収集”ではなく“データ活用”です。
本稿では、訪日外国人向け街頭アンケート調査で取得したデータを、どのようにマーケティング戦略へ転換していくべきかについて2回に分けて解説します。
◆なぜ今、街頭アンケート調査が重要なのか
デジタル行動データが普及した現在でも、街頭調査には独自の価値があります。
Webアクセス解析や購買データでは把握できない「感情」「印象」「期待値」「不満要因」といった定性的インサイトを取得できるためです。
特に訪日外国人市場では、
- なぜその場所を訪れたのか
- 何に困ったのか
- 何に満足したのか
- 日本に期待していた体験との差異は何か
といった“文脈情報”が極めて重要になります。
これはカスタマージャーニー分析やCX設計において不可欠なデータです。
さらに街頭調査は、「旅行中のリアルタイム回答」を取得できるため、リコールバイアスが少ない点も大きな強みです。
◆重要なのは“属性別分析”である
街頭アンケート調査を実施した際、多くの企業が単純集計で終わってしまいます。
しかし、本当に重要なのはクロス集計によるセグメンテーション分析です。
例えば同じ「満足度80%」という結果でも、
- 国籍
- 年齢
- 同行者タイプ
- 訪日回数
- 消費金額
- 滞在日数
- FIT(個人旅行)か団体旅行か
によって評価構造は大きく異なります。
特に近年のインバウンド市場では、FIT化が急速に進行しています。
そのため、「国別マーケティング」だけでは不十分であり、“旅行スタイル別”のインサイト分析が重要になっています。
例えば、
- 欧米豪FIT層は「文化体験価値」を重視
- 東アジア層は「利便性」や「決済環境」を重視
- 富裕層は「混雑回避」や「パーソナライズ体験」を重視
など、ニーズ構造は大きく異なります。
つまり、調査データは“平均値”ではなく、“差異”を見ることが重要なのです。
◆定量データだけでは不十分、自由回答のテキスト分析が鍵になる
近年のインバウンド調査では、自由回答データの価値が急速に高まっています。
なぜなら、訪日外国人の不満や感動は、選択肢だけでは表現しきれないからです。
ここで重要になるのが、テキストマイニングです。
例えば自由回答から、
- 「駅が複雑」
- 「英語表記が不足」
- 「地方ではキャッシュレスが使えない」
- 「混雑がストレス」
といったキーワードを抽出し、出現頻度や感情傾向を分析します。
これにより、数値だけでは見えない“潜在課題”が可視化されます。
最近では生成AIを活用したセンチメント分析も進化しており、ポジティブ・ネガティブ感情の分類だけでなく、「期待ギャップ」の抽出まで可能になっています。
◆“不満”より重要なのは「再訪意向」である
インバウンド戦略において、本当に見るべきKPI(重要業績評価指標)は満足度だけではありません。
重要なのは、
- NPS
- 再訪意向
- 推奨意向
- SNS投稿意向
です。
なぜなら、訪日外国人市場では“口コミ経済圏”の影響が極めて大きいからです。
特にInstagram、TikTok、小紅書(RED)、YouTubeなどのUGCは、旅行意思決定に大きな影響を与えています。
つまり、街頭アンケート調査は単なる満足度調査ではなく、「情報拡散力」を測定するツールとしても活用すべきなのです。
例えば、
- 「この体験をSNSで共有したいと思うか」
- 「友人に日本旅行を勧めたいか」
- 「また来日したいか」
といった設問は、インバウンド施策の投資利益率を測定する上で重要な指標になります。
次回のコラムPart2では、集めたデータをどのように活用していけばいいのかを解説します。
豊富な知見から、最適な定量調査をご提案いたします。
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